人材育成コンサルタント&社労士の浜田純子です。
組織が大きくなればなるほど、
あることがらを全体に徹底させていくためにマニュアルを作ることは、大きなメリットをもたらします。
マニュアルを作ることで、スムーズに業務が流れていきます。
では、接客接遇において、
「感じの良い応対を徹底させたいからマニュアルを作る」という策はどうでしょう?
もちろん、「何をするべきなのか?」を一人ひとりに浸透させるためには有効です。
つまり、行動規範を明確にするという意味では、メリットがあるわけです。
しかし、ここに落とし穴があります。
それは、「行動」だけにしか目がいかなくなることです。
「その行動をしたか? しないか?」だけに意識が向いてしまいがちです。
業務であれば、マニュアルにより自分自身の仕事に対するチェックもでき、有効であるはずのものが
接遇においては、デメリットもあるのです。
たとえば~
あるショップでで、お客さまがいらっしゃたら、「いらっしゃいませ」という挨拶をしよう
というルールを作ったとします。
わかりやすいルールです。
これであれば、今日入社したアルバイトさんだって、実践可能です。
今日いらっしゃったすべてのお客様に対して、
一人欠かさず「いらっしゃいませ」を言うことができたとします。
ショップ側としては、感じの良い応対ができたと大満足です。
しかし、お客さまサイドはどうでしょう?
現実には、満足したのはショップ側だけで、
すべてのお客様が感じが良いと満足をしてくださったかというと、それはわかりません。
なぜでしょうか?
接遇は、こちらの気持ちが行動を通して相手の心に届いてこそ成り立つからです。
「いらっしゃいませ」と言うこと自体が大切なのではなく、
「ようこそ来てくださいました!」という感謝の気持ちを伝えることが大切なのです。
その気持ちが「いらっしゃいませ」という言葉に乗っかっていなければ、あまり効果はないのです。
それどころか、もし、下を向いて作業をしながら「いらっしゃいませ」と言ったりすると
心無い言葉だということが一目瞭然で、逆にお客さまの怒りを買う可能性だってあるわけです。
マニュアルを作ることで、やるべきことをチェックすることは可能でしょう。
しかし、接遇においては、それだけにとらわれることなく
なぜマニュアルにはそう書かれているのか? なぜ「いらっしゃいませ」という必要があるのか?
それらをしっかりと理解したうえで、臨機応変にこちらの心遣いを伝えることが欠かせません。
マニュアルが必要な場合には、
そのまま放置するのではなく、その使い方についてしっかりとフォローしていくことが求められます。
意外に大きな落とし穴にもなりかねないマニュアル、うまい導入をしたいものです。